SuperSaaSビジネスコラム

カフェ飽和市場の中で、生き残り可能なカフェに必要な条件とは?

カフェという存在が私たちの毎日の生活と切っても切り離せないものになって久しい。
出勤前にトーストとコーヒーで腹ごしらえを、犬の散歩のついでにドッグカフェに寄り、ランチを食べ、昼下がりには友人と長話に花を咲かせつつケーキをつつき、夜にはアルコールも楽しめたり・・・。
いつでも、誰とでも、どんなシチュエーションでも、カフェは受け皿になってくれる。

喫茶店

いつかは自分でもカフェを開きたいという夢を胸に抱いている人も少なくないのではないだろうか。

しかしこのカフェという業態、自分が経営する側になると、なかなか手強い存在だ。

まずカフェ市場はすでに飽和状態にある。一説によると日本にある中華料理屋が6万軒、そば・うどん屋が4万軒なのに対し、 喫茶店・カフェはなんと9万軒とも言われている。既にありとあらゆるタイプのカフェが出尽くし、飽和した市場の中で新しい店が出ては消え・・・というサイクルを繰り返しているのが現状だ。

フランチャイズの喫茶チェーン店のレベル上昇も著しい。今や個人経営のカフェと匹敵するレベルの「味の良さ」「特色あるメニュー」「こだわった空間作り」を備えたチェーン店が目白押しだ。

そんな飽和状態のカフェ市場で、個人経営のカフェが生き残っていく道は一体どこにあるのだろうか。

手始めに、カフェに足を運ぶ客の目的意識を考えてみよう。
レストランでの一番の目的が「食べる」、バーでの一番の目的が「飲む」だとするならば、カフェに来る客の一番の目的は何だろう?

「美味しいコーヒーを飲む」「ゆっくり本を読む」「友人とお喋りに花を咲かせる」など、様々な答えがあるだろう。しかし、もしそれらを一言で表現するならば、すべての人の目的は「寛ぐ」ことではないだろうか。
よって、店側がなすべきことは客が寛げる環境を提供することだ。

ただし、ここで重要な点は、「すべての人が寛げる環境」を目指してはならない、ということだ。

「寛ぐ」という言葉の意味するところは人それぞれ異なる。
たとえば、学校帰りの女子高生グループにとっては、「ノリの良いBGMが掛かっていて、にぎやかにお喋りできる環境」、デート中のカップルにとっては 「ムードのある照明や並んで座れるソファがあるなど、気分が盛り上がる環境」、仕事帰りの会社員にとっては「好きな本の世界に没頭できる静かな環境」など、多種多様だ。
「すべての人が寛げる環境」など存在し得ないし、それを目指したものは単に「何の印象も残らない店」でしかなくなってしまう。

店側がやるべきことはまず「ターゲットとする客層」を定め、その客層が「寛げると感じる環境」を的確に判断し、作りあげることだ。
そして、ターゲットとする客層にヒットし、リピーターになってもらう為には、ターゲット外の客層は締め出す位の徹底的なこだわりが必要不可欠だ。

客層を絞った店づくりで成功しているカフェの一例を挙げて説明しよう。
その店の立地条件は決して良いとは言えず、かつカフェとしてはかなり高い価格設定であるにも関わらず、平日・休日、昼夜を問わず、まんべんなく客が入っている。
そのカフェはターゲット客層を「どこまでも上質な空間を楽しみたい大人」に絞り込んでいる。その客層が「寛げる」と感じるワンランク上の非日常空間を演出する為、あえて大きな看板は出さず、隠れ家のような店構えだ。

そして最も重要な要素が価格設定。この店では、すべてのメニューの価格が1000円~に設定されている。コーヒーでもスムージーでもアイスクリームでも、すべて1000円だ。
来店した客の中には、メニューを見て予想外の価格の高さに注文せず店を出る人もいるし、帰り際に悪態をついていく人もいる。

しかし店側からすればそれらはすべて思惑通りなのだ。この店にとって、にぎやかに世間話をする女性グループや、手早く空腹を満たしたいビジネスマンはターゲットではないし、そのような客層は、上質なものに囲まれてゆったりと時間を過ごしたいターゲット客層と相容れない存在だ。
店がターゲットとしていない客層を的確にはじいてこそ、ターゲットとする客層に本当にヒットする環境作りが可能になり、リピーターを獲得することができるのだ。

仮にこの店がコーヒーの価格を500円にしたら、来店者数は増えるだろうか。
答えは恐らくNOだ。
1000円のコーヒーは飲まないが、500円なら飲む、という客層は、この店が提供している環境を「特別寛げるもの」とは感じないだろう。
よって、熱烈なリピーターになることは考えにくい。一方、元々ターゲットとしている「どこまでも上質な空間を楽しみたい大人」にとっては、多種多様な客層が出入りすることにより店内の空気が乱れるので、寛げる環境ではなくなり、足が遠ざかってしまうと考えられる。

1000円のコーヒーが、ターゲット外の客層を締め出し、ターゲットとなる客層を引き寄せる機能を果たしているのだ。

少々極端な例を出して話をしたが、チェーン店には不可能な「極端に絞り込んだターゲット客層の設定」と、「その客層にヒットするようにこだわった環境作り」こそが、個人経営のカフェが飽和市場を生き抜く道だ。
的確なターゲット設定と環境作りで、心意気と特色のあるカフェが生き残り、カフェ市場がさらに充実したものになっていくことを期待したい。